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株式会社 九鏡

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鏡四方山話09壬申話

「円い大きな鏡」

大円鏡智

これぞ「大円鏡」注1)
「水は、方円の器(うつわ)に随(したが)う」、「前方後円墳」・・・、「方」と「円」、「丸」と「四角」、で、それがどうかしたかというと、「鏡」は、「丸い」のがいいのか「四角い」のがいいのか、

「そげなんことは、使うモンの勝手たい・・・!」
とも云えますが、われわれ「鏡屋」にとっては、あながち無視できぬ問題ではあります。古代の「金属鏡」なら、鎔けた金属を「鋳型」に流し込みさえすれば、「丸型」だろうと「角型」だろうと「ハート型」だろうと、お客様のお好みの型は、どうにでも作れたのですが、今の「鏡屋」の材料とする「鏡」は、「板ガラス」を素材にして作った「板鏡」、したがって「板ガラス」の加工上の長所短所はそのまま引き継いでしまって、「好みのかたち」は、選択範囲がいたってせまくなりました。

「そんなら、あたまっから(最初から)ガラスの型ば変えて作りやあよかろうもん!」
といいたいのですが、今の「板ガラス」の製造工程からすると、これは無理なはなし注2)。
「古代鏡」にも、「丸」もあれば「四角(方鏡)」もあるようで、とはいっても、圧倒的に「丸」が多い、やっぱり四角な「おきゅうと」を作るより丸い「ホットケーキ」を作るほうが楽だということでしょうか・・(ん?) 注3)

「お釈迦さま」の教え、「四智」のなかに「大円鏡智」(だいえんきょうち)(他の三つは、「平等性智(びょうどうしょうち)」、「妙観察智(みょうかんざつち)」、「成所作智(じょうしょさち)」)という教えがあります。
「大円鏡智」とは、天ほどの大きな鏡(大円鏡)は、あらゆるものの影をありのままに映す、特に人の世の「煩悩」や「汚れ」に惑わされずにすべてのものを映し、照らす、この鏡のような智慧のことを「大円鏡智」といいます。この智慧は「仏」になって、はじめて得られるもののようです 注4)

「仏さま」だからこそそんな大きな「鏡」を、お作りになられたのだろうとは思いますが、われわれ「衆生」のものでも、なんとかちっぽけでもいいから「円鏡」を作らねば、と「鏡屋」は思うのですが。

で、「円鏡」を作るには、元板鏡(これは四角な板鏡)を持ってきて、鏡の表面(写る面)を上にして、次に「円鏡」の直径の半分(半径)を出し、コンパスの原理を使った「ガラス切り」で、円を描いて切断します。「円部分」だけを取り出して、残材は、他に流用できる大きさがあるかないかで、保存するか廃棄するかの選択。用途に合わせて、小口(切り口)を研磨したり、しなかったり。これで「円鏡」の出来上がり注5)
ちいさいものは、たとえば「歯医者」さんの「むし歯」診察用の鏡、少し大きくなると、「灯台」の「集光レンズ」の補助をする反射鏡注6)、大きなものでは、「天体観測望遠鏡・昴(すばる)」、その「円鏡」は単体で直径が世界最大の「8,300㍉メートル(8.3メートル)」もある巨大なもの注7)。とはいえ、このての「円鏡」は、それぞれの「専門家」の「腕の見せどころ」なので、わが「鏡屋」とはやや距離のあるお仕事ではありますが。

それでも、「仏さま」の「大円鏡」には、まだ足元にも及ばないものの、この「昴望遠鏡」は、遥かかなたの「大宇宙」を垣間見ることで「教え」の「真相」を説き明かしてくれるかもしれません。(「ハッブル」なぞに負けてはなりませぬ。)

注1)「円」が「方」を含んで、「大円鏡」となります。
注2)「検索」で、「板ガラスの製造」をご覧いただければ、幸いです。
注3)「おきゅうと」、「博多」の夏の朝食には、欠かせぬもの。美味しいですよ。
注4)この「智慧」は、「般若」といわれ、かの著名な「摩訶般若波羅密多心経」は、僅か276文字でこの教えを説いています。「彼岸という理想の世界へ到
達するためのもっとも優れた心のための教え」とでも訳するとよいでしょう。要、「布施」(ふせ)、「持戒」(じかい)、「忍辱」(にんにく)、「精進」(しょうじん)、「禅定」(ぜんじょう)、「智慧」(ちえ)の六道具。
注5)ここでは、「方」から「円」が生れることになりますが、「円」が「方」を含むということと「矛盾する」?、どうしましょう・・・。
注6)この「反射鏡」は、「灯台」の「光源」の「効率」を高めるのに、非常に大事な役割をしています。かつて、あの「アレクサンドリア(エジプト)」の港の灯台に、すでに「銅製」の「反射鏡」が使われていたようです。
注7)「すばる(昴)」といっても、唄の題名ではありません。日本が、世界に誇るウルトラ・ハイテク「天体望遠鏡」です。「検索」で、「昴天体望遠鏡」をご覧ください。

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この頁は、話しの行き掛かり上、「仏説」「教義」などの「正論」、「本論」等から外れるところもあるやもしれませんので、不都合があります段、平に、ご容赦いただきますよう・・・

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